[second light]4期 最終コンペ レポート
- 7月14日
- 読了時間: 8分
更新日:7月15日
2026年6月27日、灯台写真教室「second light」4期の最終コンペを開催しました。
最終コンペは、受講生が期間を通して制作してきた作品を発表するsecond lightクラス集大成の場です。
今回の参加者は10名。審査には、灯台写真教室を主宰する木村和平・馬込将充に加え、ゲスト審査員として島口大樹さん、羽鳥広海さんを迎えました。
・ゲスト審査員紹介
島口 大樹 / 小説家

1998年 埼玉県出身
2021年『鳥がぼくらは祈り、』で第64回群像新人賞を受賞しデビュー。
同作は第43回 野間文芸新人賞候補に選出される。
2022年『オン・ザ・プラネット』で第166回芥川賞候補。
2025年『ソロ・エコー』が第42回織田作之助賞を受賞。
羽鳥広海 / 写真集コンシェルジュ

1998年 埼玉県出身
早稲田大学 文化構想学部卒業。
代官山蔦屋書店 写真集コンシェルジュとして日本人写真家の棚を担当。
Soul Mate Books主催
・最終コンペについて
コンペは、ゲスト審査員の紹介と審査方法の説明から始まりました。
持ち時間は一人15分。受講生は完成した写真集を提示しながら自作について5分程度のプレゼンテーションを行い、残り10分間で審査員との質疑応答に移ります。
グランプリは、4名の審査員による採点で決定します。各審査員が10作品に対して1点から10点までを重複しないように割り当て、4名の合計点がもっとも高かった作品をグランプリとします。同点の場合は10点を獲得した数で比べ、それでも決まらなければ審査員の再協議で決める、という方式です。
これとは別に、得点にかかわらず各審査員が一作品を選ぶ「審査員賞」も設けています。

・プレゼンテーションと質疑応答
岡ももえ『ひかりの編み目』

生前に確執のあった祖母と向き合うことから、自身や家族、そして生について見つめた作品です。祖母との関係をわかりやすく説明したり、過去をきれいに整理する作品ではなく、残された記憶や家族の時間をたどりながら、それらが今の自分にどうつながっているのかを探求する内容でした。出発点は個人的な経験ですが、家族のあいだで引き継がれていくもの、人が誰かを記憶するということへと、射程が広がっていく写真集に仕上がっていました。
米田聖愛『銘 銘』

双子の妹を題材にした作品です。双子は外見や関係性から、ひとまとまりの存在として同一視されることがあります。けれど当然、二人にはそれぞれ別の人格と個性があり、固有の人生があります。妹を写すことを通して、作者は二人の共通点と差異を見つめていきました。それは同時に、他者を一人の個人として認識するとはどういうことかを、見る側に問いかける試みでもあります。
川田涼平『Useless Landscapes』

社会では、意味のあるもの、価値のあるもの、役に立つものが重視されますが、本作はその価値観に背を向け、身のまわりの風景にひそむ「意味を失ったもの」や「役に立たないもの」へカメラを向けました。目的や説明に回収されない風景を見つめることで、普段は見過ごされている世界の姿をもう一度発見しようとしています。
矢嶋縫『yajima0123』

作者の娘を中心に撮影した膨大な写真と、いくつかのテキストからなる作品です。写っているのは、一人の子どもが成長していく姿だけではありません。子どもだった作者自身、母親である現在の自分、パートナーと娘。それぞれの人生が、撮影された時間の中で重なり合っていきます。きわめてパーソナルな家族の記録でありながら、親と子、見る者と見られる者、そして人が生きる時間そのものへと開かれていく一冊でした。
堀山俊紀『さみしくなったら』

「さみしさ」という、シンプルで、それゆえ普遍的な感情に向き合った作品です。誰かといるときにも生まれるさみしさ。一人になって初めて気づく感情。かたちを持たず、人によって異なるその感覚を、写真の連なりで捉えようとしました。個人的な感情から出発しながら、見る人それぞれの記憶や経験に静かに触れてくる作品でした。
髙橋萌恵『Planet of Thanatos』

作者自身の価値観や物事の見え方、人との関わり方、そして死生観を写真で表現した作品です。一枚一枚に、作者が世界をどう認識し、何に引き寄せられているのかが表れています。出来事を説明するのではなく、複数のイメージで独自の世界を組み上げ、その内側の感覚をそのまま鑑賞者に手渡そうとしていました。
鶴田貴大『LATENT STATE』

パートナーの妊娠をきっかけに制作された作品です。変化していく身体と、少しずつ変わっていく日々。その断片をただ記録として残すのではなく、ひとつひとつ「ファイリング」するような構成で提示しています。まだ目の前に現れていない存在を待つ時間、変化の途中にある身体と生活。タイトルの示す「潜在した状態」を、写真集と資料ファイルという二つの形式を往復しながら留めようとした一冊です。
生田優希『周縁』

「周縁」というキーワードを軸に、写真を撮る歓びや、人との関わり方を模索した作品です。作者は撮るという行為を通して、自分と他者、そして世界との距離を測ろうとしていました。撮影することの根源的な喜びと、自分はこれから写真とどう関わっていくのか。その問いをまっすぐに差し出していました。
児島菜波『こわくても今を見ていて』

作者自身のパーソナルな特性と向き合いながら、母を介してルーツをたどる旅と、現在の日々の生活を見つめた作品です。過去や家族の歴史を振り返ることは、必ずしも安心できる行為ではありません。それでも作者は、足元にある生活と、そこへ続いてきた時間にカメラを向け続けます。静かな写真の積み重ねから、現在を見ようとする強い意志が伝わってきました。
清水美来『停滞』

疎遠になっていた父の遺影を撮影するため、作者が旅をする、その過程から生まれた作品です。父という存在をどう写し、作品のどこに位置づけるのか。模索の中で、自身の親知らずを着想として取り込んだ構成が印象に残りました。身体の一部でありながら、ある時期まで姿を現さない親知らず。それを父との関係に重ねることで、長いあいだ留まっていた時間や感情に向き合い、またそこで生じる疑問を鑑賞者に提示することで、他人ごとではない作品に仕上がっていました。
・審査結果
全10名のプレゼンテーションと質疑応答を終え、得点を集計。
グランプリは、合計35点を獲得した矢嶋縫さんの『yajima0123』に決定しました。
身近な存在に目を向けつつ、作品自体が持つ重厚さや広がり、テキストを含めた完成度が高く評価されました。
審査員全員が納得し、また「一生に一度作れるかどうかの作品」という激賞の声も。
また、審査員賞には、児島菜波さん、鶴田貴大さん、髙橋萌恵さん、川田涼平さんの4名が選出されました。
※各受賞作品は受賞作品ギャラリーにて一部をご覧いただけます。
グランプリ
矢嶋縫『yajima0123』
審査員賞
木村和平賞 - 児島菜波『こわくても今を見ていて』
馬込将充賞 - 鶴田貴大『LATENT STATE』
島口大樹賞 - 髙橋萌恵『Planet of Thanatos』
羽鳥広海賞 - 川田涼平『Useless Landscapes』
・審査を振り返って
今回の採点では、ゲスト審査員の島口さんと羽鳥さんの評価が大きく分かれる場面がありました。同じ作品を前にしても、どこに価値を見出すか、どんな可能性を重く見るかは審査員によって違います。複数の審査員で作品を見ることの意味が、点数の差にそのまま表れていました。
一方で、木村と馬込の採点は、事前に相談も調整もしていないにもかかわらず、非常に近い結果になりました。教室で継続的に受講生の作品を見てきた二人が、異なる視点を持ちながら、完成度や展開の可能性についてはほとんど同じ判断に至っていた。これは私たち自身にとっても興味深い結果でした。
これまでの最終コンペでは、審査員の合議によってグランプリを決めていました。今回から得点方式に切り替えたことで、議論の流れや発言の強さに左右されず、それぞれの審査員の判断を独立したまま結果に反映できるようになりました。また、合計点とは無関係に選出する審査員賞の存在によって、総合評価だけでは掬いきれない作品の魅力や可能性にも光を当てられたように思います。
・[second light] 4期を終えて
今期は、自身の内面や家族、ルーツ、パートナーとの関係など、作者自身のバックボーンを下地にした作品が多く発表されました。
パーソナルなテーマを作品にすることは、経験をそのまま提示することとは違います。個人的な出来事をどう写真に変換し、他者が見ることのできる作品として組み立てるのか。その問いに、受講生それぞれが自分のやり方で向き合っていました。
もう一つ、今回強く印象に残ったのは、発表された写真集のクオリティの高さです。写真を撮るだけでなく、選び、並べ、言葉や装丁も含めて一冊にまとめる。内容と形式の両方に長い時間をかけてきたことが伝わる発表ばかりでした。
最終コンペは、一つの作品の完成を示す場であると同時に、その先の制作へ向かう通過点でもあります。ここで交わされた意見と、作品を発表した経験が、それぞれの次の制作につながっていくことを願っています。
second light 4期に参加した皆さま、そして審査に加わってくださった島口大樹さん、羽鳥広海さん、ありがとうございました。